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社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㊱

2024/10/22

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 なお、遺言の解釈は、遺言書に記載された文言をどう解するかの問題であり、その意味で、遺言書を離れて遺言者の真意を探求することは許されないものとされます。

 最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決によると、「遺言の解釈に当たっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するに当たっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきである」とあります。

 審判所の判断では「本件遺言書第4項ただし書は、預貯金等で本件被相続人名義になっていないものは、それぞれの名義人の所有である旨記載されていること、追加遺言書に「『Gがこのお金をおろす時は』と記載されていることから、本件被相続人は、預貯金等については、各名義人以外の者がこれを換金することは予定しておらず、本件相続の開始日まで本件預貯金等がそのまま維持されていることを想定していたものと認められる。」とし、また「本件預貯金等は、請求人及びEらの相続放棄により本件被相続人が単独で相続した亡Hの資産であり、本件被相続人の意思で各人名義の預貯金等としたこと及び本件被相続人は、請求人による本件預貯金等の換金の事実を知らなかったことを併せかんがみれば、本件遺言書第4項ただし書は、本件遺言書作成時に本件被相続人が各人名義で預貯金等としていたものは、換金のいかんにかかわらず、これを各名義人に遺贈するという趣旨であると認めるのが相当である。」として、本件被相続人の真意を合理的に解釈したものといえます。

 しかし、そもそも「本人の意思」により財産の帰属を明確にしている疎明資料があれば、問題にならなかった事案といえます。

 上記の裁決は全て納税者が勝利したものを意図的にセレクトしています。証拠の有無、証明力、自己の主張について、どこまで証拠の裏付けをもって立証できるか、これが上掲の裁決で納税者が勝利したポイントとして共通していえることと考えられ、それに係る実際の事案を検証しています。

 そして、これを実務でそのまま生かせば、当局の調査に十分対応しうる「可能性もあります」。

 一方、納税者が結果として勝利したとはいえ、それは周辺の関係事実に関しての主張の積み重ねが認められた結果論という、厳しい評価もできます。証拠がなくても周辺事実の積み重ねを丁寧に説明、主張することで納税者の考え方、主張がいつでも認められるとは決して考えてはならないことです。不遜な物言いですが、それでは考えが甘いものと思われます。エビデンスの事前準備こそが納税者の主張を強める大きな効果の一つと断言できます。

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